原作者:みら太な日々 様
転載元:みら太な日々のブログ
変更点:一部の画像を削除と変更
補足:
V-slotは2013年Mark Carew様がContraptorプロジェクトとMakerSlideプロジェクトに基づき、発明したものであります。他にも
2012年にOpen Rai機構を発明しました。
2015年にC-beam機構を発明しました。
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V slot というものをご存知でしょうか。
V slotはアルミフレームとローラーを使った直動機構の(パーツの形状の?)一つにつけられた名称です。
リニアガイドに比べて格段に簡単で、精度もそこそこですが、いわゆる趣味の世界が求めるレベルには十分にこたえられるという、妥協の産物というか、合理性の極みというか、そんな機構であると見ています。
例えば、FABOOLやpodeaのXY機構がV slotで組まれています。
似たようなものはほかにもあって、古くはShapeokoやBlade-1で使われたMaker Slideがありますし、V slotに精度が高い台形ネジやボールねじを組み合わせた機構としてC-beamなんかがあります。
ということで、みんな大好きXYステージを組むために色々と工夫がなされておりますが、いずれの機構もフレームにベアリングやローラーを保持するための特殊な形状のものを使っております。構造体としてのフレームとスライドのガイドを兼ねているというのがこれらの機構の特徴と言えるでしょう。
Maker Slide はフレームの直角三角形の凸部分がフレームについており、V slotは逆に溝の部分が左右45度の谷に削られております。
これらのフレームは通販で買うことができますが、どれも高価であるというのが難点です。Maker Slideはそもそもの値付けが高価ですし、V slotは中華通販で買えばフレームそのものの値段は安いのですが、長物であるがゆえに送料が高いのです。国内にも取り扱いはありますが、それこそ飛んでもない値段がつけられております。
今回の投稿は、みら太な日々ならではのけち臭い知恵と工夫の話で、このV slotを国内で安く入手できるアルミフレームで組めないかというテーマを考えてみます。
例えばミスミやモノタロウの通販で手に入るアルミフレームはmm単位できれいに切断して届けてくれる上に、メートルあたりの単価は数百円という破格です。これが活用出来たらすごく安くそれなりの制度のXYステージが組めると思うのです。
では、V slot と一般的なフレームの形状の違いから見ていきましょう。
こちらがV slot フレーム。ぱっと見普通のフレームに見えますが、
ミスミで買えるV slotではないフレームと比べると一目瞭然です。溝の部分の形状が異なります。
ミスミフレームはただの丸面取りですが、V slotは45°で比較的大きく切れ込まれた形になっています。
重ねてみると違いがよく分かりますね。
3Dで見るとこんな感じ。
で、この溝部分にこんなローラーを
こんな感じに組み付けることでV slotのスライド部分が構成されます。
ローラーの断面形状はこのようになっていて、45°の面取り部分がレールの溝面とぴったり合うようになっています。
ローラー含めて図面にしてみます。ローラーはGrabCADに部品図がありますので使わせていただきます。
ぴったりあてて、
こんな感じに溝を転がります。実際はレールを上下のローラーで挟み込むようにして脱線を防ぎます。
さらに、レールの抱き込みにガタがあると精度が悪くなりますので、上下のローラー位置を微調整して適切な力で締り嵌めするように工夫します。この部分にはエキセントリックナットと呼ばれている偏芯ナットが使われます。バイクのリアアブを動かしてチェーンのテンション調整をするところにエキセントリック機構が使われているのをよく見ますね。
このローラー、ミスミの20mm角フレーム(5シリーズ)の溝にはほとんど入りません。組んでもすぐに脱線すると思われます。
ここでひとひねり。
ミスミには結構特殊な形のフレームがあって、その一つにこんな5+6シリーズみたいな溝幅混合シリーズがあります。これ、一組の対辺は6シリーズの溝幅8mm、そしてもう一組は5シリーズの6mm幅になっています。
メートル単価770円。300mm未満は230円固定で、以降スライド価格です。mm単位での切断可能。
こんな形です。
これの8シリーズ側の溝を使うと、こんな感じのローラのあたりになります。これなら脱線しそうじゃないでしょ。
いろいろな配置を見てみます。
もちろん無理やりです(笑
V slotはローラーとレールがちゃんと面で(理想的には線ですか)接していますが、上記無理やり方式では理想的には点でしか接していません。よって機械強度には大きな違いが出ると思われます。
が、レーザ加工機のミラーとレンズを振り回す程度であればこれでも十分そうです。ローラーの摩耗は早いと思いますが、そこはそれ、自作ですからメンテナンスは完璧ですよね。設計者兼サービスマン兼使用者がすぐそばに居るのですから。
もちろん、最初から溝幅8mmの6シリーズで組めばいいわけですが、30mm角フレームは結構太くて迫力があります。デスクトップレーザー加工機くらいの用途にはオーバースペックと思われます。
ということで、混合溝幅が大げさにならずに良いだろうと目をつけているのです。