CNCのメタルプリンター化について

以前にメタルプリンターと呼ばれるローランドDG社のMETAZA(メタザ)で金属に文字をマーキングしたことがあるのですが、メタザのプリントヘッドにはダイヤモンドのピンが付いていると言われていたことを思い出し、前回の検証でCNCのエンドミルをドラッグナイフに替えてカッティングプロッター化した時のように、今度はダイアモンドピンに付け替えればアルミ程度なら文字をマーキングできるのではないかと試してみました。
以下に自分なりの手順やこれまで気付いた点などまとめてみます。

■ダイヤモンドピン(先端にダイヤモンドが付いた尖った軸鋼)について

海外の動画で一般的なCNC機をマーキングに使っているシーンを見ると、ピン自体にバネが内蔵されている専用のマーキング用ピン(Diamond Drag)を使っているようでしたが、残念ながら類似のピンも含めて自分でも手に入れられそうなものは見つけられませんでした。

メタザではプリントヘッド先端のダイヤモンドのピンをワークに細かく振動し打ち付けてマーキングしていたようでしたが、今回はピンを振動させることは考えず、ただ単にバネでピンに押し圧をかけながら引き摺ってワークをけがくことをイメージし、ピン先端にダイヤモンドが埋め込まれているシンプルで安くて評価が良さそうなものを探して購入。

届いたのがこれ。

軸径は約10ミリ。ある程度太い軸のほうが全体の剛性も上がるかと期待。
先端のダイヤモンドはピラミッド状に面が尖っていて、埋め込まれてる様子が少し無骨でしたが、無茶な条件で引き摺っても簡単に外れる恐れは無さそう。

■コネクター

さてこのダイヤモンドピンをルータに装着するわけですが、以前CNCをカッティングプロッター化したときに作ったビニールカッター用のコネクターを応用することにします。

ビニールカッターの時はツバ状の出っ張りがストッパーの役割につかえたのですが、今回のダイヤモンドピンはただの円柱なので、ストッパー代わりに軸径より少し大きめなネオジム磁石をピン底に磁力接着しておきます。そのストッパー位置のズレた分だけコネクターの内部寸法を調整して再設計。

コネクタCG図

とりあえずプロトタイプが出来たのでルータに装着します。

ダイヤモンドピン自作コネクター

■マーキングデータ

マーキングデータについては、文字であれば一般的にはグラフィックソフトやCADで文字フォントをアウトライン化し、Gコード化していく流れになると思うのですが、Vcarve上ではシングルラインの文字で作り始めることもできるので、細かい文字でも読み取りやすくマーキングしたい時には有用です。

今回は文字の大きさを3mmとし、シングルラインで文字を作り、パスをGコードで出力しマーキングデータを作ります。

■マーキング

さて手元にアルミ板(A1050)厚1.0の端材があったのでこれにマーキングしてみます。
A1050はアルミとしては柔らかいので、切込み深さを浅めに設定しマーキングの状況を見て調整していくことにします。
送り速度600mm/min、切り込み深さ0.1mm(切削深さ0.5-Z基準高0.4)。
ルータはもちろん回転させずそのまま。

ダイヤモンドピン・文字マーキング01
(振動で撮影カメラが最後まで揺れ続けます)

綺麗に文字がマーキングできました。
触ると少しバリが出ていたのでとりあえず検証は終了。

■考察
・先端のダイヤモンドは大雑把にピンに埋め込まれているように見えるが、仕上がりを見る限りでは軸芯に対して中心で確かにマーキングしている模様。安価の割に購買者の評価が多かったのも納得。
・アルミであれば尖ったエンドミルで切削しても文字は彫り込めたとは思うが、薄板だとマーキングしたほうが均一な文字が綺麗に表現できそう。
・今回のようにコネクターでピンをルータ芯に取り付けてあると、マーキングと切削を組み合わせた工程が組めるので位置合わせ良く加工できる。(例:製造番号をマーキングした後そのままパーツを切り出せす工程とか)
・より硬いワーク(ステンレスとか)にマーキングするには、バネの剛性を上げるなどで押し圧を上げるか、もしくは太めの文字にして薄くても視認性を良くするかのどちらかの方法が今のところ考えられる。またもし曲線・曲面で構成されたワークを扱う場合は、圧に耐えられるよう強固に固定する工夫が必要と思われる。

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■ステンレスにマーキング検証

アルミ板に文字マーキングができて一応納得したので、その後試しに硬いワーク(レンチ)に対して押し圧強めにけがいてみたのですが、うっすら細い線しかマーキングできませんでした。

メタザではピンを打刻するのでレンチ程度の固さであれば細い文字でも認識できるぐらいはマーキングできていましたから、このあたりはやはり自作メタルプリンターには限界があります。
であれば、薄いのなら太い文字にすればそれなりに認識できるようになるのではと、改めてマーキングデータを作り直し再検証することに。

■マーキングデータの補正(ステンレスワーク用)

まずはシングルラインで書いていた文字を通常の(TrueType)フォントに置き換えます。
そのうえでパスを再設定するのですが、今回はVcarveのクイック彫刻設定を初めて使ってみます。

この設定画面を開くと工具欄に「ダイヤモンドドラッグ」が初期設定されていることに気が付きます。
もしかしたらこの設定は前回海外の動画で見たDiamond Dragを使ったマーキングを想定しているのかもしれません。
とりあえず初期設定のまま「ダイヤモンドドラッグ」にしておきます。
最終深さはとりあえず1.0mmとし、アルミの時より強い押し圧をイメージ。

さて今回の設定では文字を太く認識させたいので、
「外周」ではなく「フィル」にチェックを入れて文字内部もけがくことにします。
ある程度密にけがきたいのでステップはとりあえず0.1mm、
けがき方は文字の太さが均一でないことからなんとなく「ハッチング」を選択。
角度は90度のクロスハッチングを選び、薄くてもまんべんなくケガキが入ると期待。

ちなみに先ほどの工具欄の「ダイヤモンドドラッグ」の編集画面で初期数値を確認してみると
なぜか回転速度の設定値が空欄ではなかった(回る設定?)ので、
もしスピンドルモーターを使っている場合は回転させないよう修正が必要となると思います。

設定が決まったのでGコード化してマーキングします。

■ステンレススプーンにマーキング

今回はステンレスにマーキングするにあたり
100均で柄が平らで固定しやすいスプーンを探して買ってきました。
固定しやすいとはいえ、テーブル面にそのまま固定するには凹凸がありすぎるので
マーキング面の水平を決めやすいよう(平行でない)柄の部分をフラクタルバイスで空中に固定。
さらに押し圧に対してスプーン下にアクリル端材を枕代わりに詰めて補強。

位置ずれしないよう作業原点を何度も確認します。

送り速度1270mm/min(50inch/min)、切り込み深さ1.0mm(Z基準高0.0)。
ルータはもちろん回転させずそのまま。

ダイヤモンドピン・文字マーキング02
(振動で撮影カメラが最後まで揺れ続けます)

一応認識できるぐらいマーキングできたのですが
よく見るとマーキングの深さ(濃さ)にムラがあったり、文字間がズレていたりしています。
固定が不安定でワークが途中でズレたのかもしれません。

■ステンレスFBにマーキング

他に探すとステンレスのフラットバー端材があったので、
バイスも外して端材をテーブルにがっちり直固定して再検証。

今度は綺麗にマーキングできました。
やはり固定の仕方は重要ですね。
光に対する向きを変えるだけで文字が浮き上がって見えたりしてとても印象的なマーキングが出来ました。

■考察
・スプーンとかのカトラリー系にマーキングできるといろいろと需要がありそうですが、マーキングの精度をよく観察すると文字間寸法にバラツキがあったりしていますので、現状では個人活用にとどめておいたほうが良いとは思いました。

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